資源ゴミの持ち去り問題とは?理由と影響・自治体の取り組みを紹介
近年、日本の各地で資源ゴミの持ち去りが横行し、問題となっています。
いったいなぜ、資源ゴミなんて持ち去るのだと不思議に思った方もいるでしょう。
また、資源ゴミが持ち去られたからといって、誰にも迷惑はかからないと思った方もいるかもしれません。
しかし、資源ゴミが持ち去られるのには理由があり、それによって迷惑を被る人もたくさんいます。
今回は、資源ゴミの持ち去りが起きる理由と影響、防止のための自治体の取り組みなどについて説明していきます。
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資源ゴミの持ち去り問題とは、ゴミ収集所に出された資源ゴミが、第三者の手によって、勝手に持ち去られてしまうという問題です。
1741の市区町村を対象とした、環境省のアンケート調査によれば、全体の46.4%が、資源ゴミの持ち去り事案を認知しているという結果になっています。
画像出典:環境省環境再生・資源循環局 廃棄物適正処理推進課「平成29年度「資源ごみ」の持ち去りに関する調査報告書」
URL:http://www.env.go.jp/recycle/report/h30-19.pdf
資源ゴミとは、以下のような、再資源化が可能なゴミを指します。
これらの資源ゴミは、使用した人の手によってゴミ収集所に出されます。
しかし、収集車に回収される前に、第三者が持ち去ってしまう事案が各地で発生しています。
資源ゴミが持ち去られてしまう理由は、それがお金に替えられるからです。
例えば、古紙などは、もともと有償で取引できるものとして、集団回収やちり紙交換など、民間事業として回収が行われていました。
その後、資源の価格が落ちたことで、お金をもらうのではなく、お金を払って引き取ってもらうものになりました。
そのため、資源はゴミに出すのが一般的になったのです。
しかし、さらにその後、資源の価格が再上昇したため、資源ゴミはリサイクル業者などに買い取ってもらえるようになりました。
この結果、資源ゴミをお金に替えようと、収集所に出されている資源ゴミを持ち去る人が出てきたのです。
資源ゴミを持ち去っているのは、主にホームレスや定職のない人たちが多いです。
こうした人たちは、資源ゴミを集めて、買い取ってもらうことで生活の糧を得ています。
なかには、こうした人たちを使って、資源ゴミを集めさせている業者も存在しているようです。
資源ゴミの回収は、主に以下3種類あります。
資源ゴミの持ち去りは、この3つのうち、「行政回収」と「集団回収」の2つに悪影響をもたらします。
ここでは、ゴミの持ち去りが、それぞれの回収にどんな影響を及ぼすのかについて、説明していきましょう。
行政回収は、市区町村などの自治体が主体となって行う回収方法です。
一般家庭から出た資源ゴミはゴミ収集所に出され、各自治体が委託した収集車によって回収されます。
行政回収における資源ゴミの持ち去りは、主に以下の事態を引き起こし、自治体の経済的な損失につながります。
行政回収された資源ゴミは、リサイクル業者に売却されます。
そのため、持ち去りによって回収する資源ゴミが減ると、自治体の売却益が少なくなってしまうのです。
また、自治体は、資源ゴミ回収のための予算と計画を組んでいます。
資源ゴミが持ち去られて少なくなってしまうと、当初組んでいた計画が崩れ、無駄な人件費が発生してしまう可能性があります。
ゴミの持ち去りによる被害は、集団回収にも及んでいます。
集団回収とは、自治会や町内会など、一定のグループによる、自主的な資源回収のリサイクル活動です。
自治体の集団回収に登録すると、登録団体として認められます。
登録団体は、資源ゴミを収集し、自治体の認める登録業者に回収してもらうことで、登録団体と登録業者、双方に報酬が支払われる仕組みです。
この報酬の額は、回収した資源の量に応じて決まります。
せっかく集団回収をしても、回収場所に出した資源ゴミを持ち去られてしまえば、登録団体も登録業者も、自治体からもらえる金額が少なくなってしまいます。
資源ゴミの持ち去りを防ぐため、一部の自治体では、資源ゴミの持ち去りを禁止する条例が制定されています。
条例の内容は自治体によって異なりますが、大きく以下2つのタイプに分けられます。
①の場合、資源ゴミは自治体の所有物となることから、勝手に持ち去れば、窃盗罪に問われる可能性があります。
②の場合、自治体が条例で罰則規定を設けていれば、以下のような罰則が適用されます。
画像出典:環境省環境再生・資源循環局 廃棄物適正処理推進課「平成29年度「資源ごみ」の持ち去りに関する調査報告書」
URL:http://www.env.go.jp/recycle/report/h30-19.pdf
罰則の内容も自治体によって異なりますが、持ち去り行為をやめるようにという「命令」が最も多くなっています。
資源ゴミの持ち去りを認知している自治体では、持ち去りを防ぐため、パトロールの実施や看板の設置などの取り組みがされています。
画像出典:環境省環境再生・資源循環局 廃棄物適正処理推進課「平成29年度「資源ごみ」の持ち去りに関する調査報告書」
URL:http://www.env.go.jp/recycle/report/h30-19.pdf
また、横浜市では、集団回収の資源ゴミ持ち去り対策に、「持ち去り警告用紙」の貼付を呼びかけています。
画像出典:横浜市「持ち去り対策」
https://www.city.yokohama.lg.jp/kurashi/sumai-kurashi/gomi-recycle/gomi/shudan/dashikata/measure.html
横浜市で集団回収をしている方は、「持ち去り対策」のページから、用紙をダウンロードして使用しましょう。
資源ゴミの持ち去りを防ぐため、協力をしたいという個人の方は、資源ゴミの持ち去りを見かけたら、自治体や警察に通報するようにしましょう。
犯人が車を使って資源ゴミを回収していた場合は、車両ナンバーを押さえておくと、犯人を特定するうえで効果的です。
ただし、資源ゴミの持ち去りを見かけても、犯人に直接注意するのはやめましょう。
犯人が逆上して、トラブルになる危険もあるからです。
資源ゴミは、お金に替えられることから、それを集めて、生活の糧にしている人もいます。
しかし、収集所にある資源ゴミの持ち去りは、自治体や集団回収の登録団体に入るはずのお金を横取りする行為です。
直接影響がなくても、資源ゴミの持ち去りを見かけたら、自治体や警察に通報するなどして、問題の解決に協力するといいでしょう。